がくちょうレポート

21世紀の教育と幸福

再現性のある面白いゲームの設計についての研究

がくちょうです。

 

タイトルの通り、研究を開始しようと思う。

 

考えることは山ほどあるが、まずは

「どのような手順で設計をするか」

という問題を検討する。

 

これは、正解があるわけでは全くないとは思うが、

自分自身の性格や考え方とフィットした、再現性のある面白さを設計するためのワークフローみたいなものを創った方が良いと考えたからだ。

 

候補

 

現段階で私が考えているのは、

感覚的な気持ちよさ

を起点、中心にスタートするというフローだ。

 

企画やアイデアには様々な粒度があると思うが、それらをまず

 

この企画において「思わずやみつきになる、無意識に何度もやりたくなるような、感覚的な気持ちよさ」は何なのか?

 

という問いに直す。

 

例えばだが、

  • 小さいタスクを無限に消化していくのが気持ちいい
  • 今回は良いものが手に入るかも?というガチャ感が気持ちいい
  • 次々に引っこ抜くのが気持ちいい
  • ザクザク削って平らにしていくのが気持ちいい
  • ぴったり真ん中に当てるのが気持ちいい
  • 機体をうまく操縦するのが気持ちいい
  • くっつけて消すのが気持ちいい
  • インクをぶちまけるのが気持ちいい
  • バランスよく積んでいくのが気持ちいい

などなど。

 

なぜ「感覚的な気持ちよさ」を原点に設計をするべきか

これに関しては、設計者が目指すものが違うと変わってくると思う。

私の場合は、ゲームを創るなら

「気づいたら初見でも30分以上やってしまい、それからも気になって開くのが癖になってしまう」

ようなゲームを創るべきだ、という方針に立っている。

 

KPIで言えば、平均プレイ時間と再帰率という感じになり、これらを伸ばすための重要な視点が「感覚的な気持ちよさ」ではないか?という考えだ。

 

難しいことを考えなくても、感覚的に気持ちが良いものは常習化しやすい。

 

言ってしまえば、「よーし、ゲームを起動するぞ」という風に意気込まないといけないようなゲームではなく、ぼーっとしている時に無意識に開いてしまうようなものだったり、ぼーっとしたい時に開いてしまうようなものだ。

 

特段すごいことが起きるわけじゃない、でも小さい気持ちよさを求めて、とりあえず開いてしまう。その先に、何らかの複合的な要素が混ざり合って、しばらくの間ゲームという空間に没入できる。

 

そういったユーザー体験から逆算し、この「感覚的な気持ちよさを原点に設計をスタートする」という選択になった。

 

原点の「気持ちよさ」をひとことで表現できたら、そこに骨や肉をつけていくことでゲーム体験を創っていく、という前提でワークフローを設計する。

 

ゲームメカニクスとしての報酬設計を追加する

感覚的に気持ち良い行動は非常に重要だが、それだけではゲームとしては成り立っていない。

 

そのため、その「感覚的に気持ちいい行動」に対して「ゲームメカニクス」を組み合わせることで、ゲーム体験の骨子を作成する。

 

ここでの「ゲームメカニクス」とは、ゲームの「目的」であると言える。

 

簡単に言えば、「気持ちよい行動が何に繋がっているのか」という部分であり、それこそがそのゲーム自体の目的である、という事になる。

 

例えば、

  • ザクザクブロックを削って平らにしていくのが気持ちいい⇒マイクラの整地⇒その行動は「安全の確保」や「建築スペースの確保」などの「文明化」というマイクラサバイバルモードの主目的に繋がっている
  • インクをぶちまけるのが気持ちいい⇒スプラトゥーンナワバリバトル⇒その行動は「対戦相手のチームよりもたくさんの面積を塗る」という「対戦」というスプラトゥーンの主目的に繋がっている
  • 今回は良いものが手に入るかも?というガチャ感が気持ちいい⇒ポケGOのポケモン探し⇒その行動は「ポケモンの収集や育成」というポケGOの主目的に繋がっている
  • 機体をうまく操縦するのが気持ちいい⇒マリオカート⇒その行動は「ベストタイムの更新」や「対戦での成績」というマリオカートの主目的に繋がっている
  • 武器をうまく操って敵を攻撃するのが気持ちいい⇒モンハン⇒その行動は「新しい素材の収集」や「武器の創造」という「育成」という目的に繋がっている

などがある。

このゲームメカニクスの部分は、実際にはそこまで多種多様なものは存在しておらず、ほとんどの場合がテンプレと組み合わせによって構成できる。

 

ゲームメカニクスの基礎構造の列挙

現段階での列挙になるが、

  1. 目標達成欲:何らかの目標をやり遂げた感覚が欲しいという欲求
  2. 冒険と探求欲:新しい何かと出会ったり発見したいという欲求
  3. 競争と比較欲:誰かと何らかの成果を競って上回りたいという欲求
  4. 協力とチームワーク欲:誰かと協力しあって一体感を得たいという欲求
  5. 成長と進化欲:成長したことを実感したいという欲求
  6. 戦略と思考欲:戦略を立てたり考えたりしたいという欲求
  7. 自己表現欲:自分が他者と違うものであると実感したいという欲求
  8. 物語と感動欲:物語や登場人物の感情的な要素に共感したいという欲求
  9. 感情の開放欲:ストレスや感情を開放したいという欲求
  10. 笑いたい欲:ふざけたり遊び心を発揮して笑いたいという欲求
  11. 交流とコミュニケーション欲:他のプレイヤーやNPCなどと交流したいという欲求
  12. 選択と制御欲:ゲーム内の選択や意思決定を通じて環境を思うとおりに制御したいという欲求
  13. リスクと挑戦欲:高難易度やハイリスクの課題に挑戦したいという欲求
  14. 感情的な刺激欲:恐怖や驚きなどの強い感情的刺激を体験したいという欲求
  15. コレクション欲:たくさんのものを集めたいという欲求

上記の15種類のゲームメカニクスに分類した。

 

ここまでのワークフローによって、

 

  1. 気持ちよさの発見と表現方法の暫定的決定(どんな気持ちよい体験をユーザーに体験させるか?をイメージする)
  2. ゲームメカニクスの選択(そもそもなぜそのゲームをやるのか?という、満たしたい欲求について、今回のゲームでアプローチするものを選択する)

という手順に直すことができる。

 

そして、上記は組み合わせによって無数と言えるゲーム創造につながるのではないか?と考えている。

 

例えば、「何らかの機体を上手く操縦するのが気持ち良い」という部分からスタートしたとしても、それに対して「1:目標達成欲」を組み合わせて設計した場合は、操縦によってタスクやスコアを達成していくゲームになるし、「2:冒険と探求欲」を組み合わせて設計した場合は、未知の世界を機体を操縦しながら開拓していくようなゲームになる。

 

このワークフローは、効率的に「プレイ時間と再帰率」というKPIを一定以上の水準に保てるゲームを創るという点において、優秀だと思われる。

 

中間整理

ここまでの理論展開で、

⑴感覚的な気持ちよさを発見、定義し、その体験を中心にゲームを設計開始する

⑵そのUXに、メインゲームメカニクスを1つ組み合わせて選択することで、ゲーム全体の骨格を構成する

という手順が完成している。

 

下記に自己評価してみる。

 

まず、上記の制作フローに従って新しいゲーム企画を創発していった場合に、どのようなものが出来上がる可能性があるか?について、テストを実施するためにAIに指示してみた。

 

結果としては、非常に好評と言える。

 

例えば、「レトロゲームでクラシックなステージをクリアする」というUXを起点にし、ゲームメカニクスとして「成長と進化欲」を組み合わせた場合に、

レトロゲームステージをクリアしていきながら、進化ポイントやアイテムを収集していき、ステージ自体のグラフィックや音楽、ゲームプレイ要素などを進化させていく。クラシックゲームを進化させながらプレイヤーのスキルも向上し、新しい要素が解放されていくゲーム

というアイデア創発された。

これは非常に現実的で魅力的なゲーム性足りえるアイデアだと思うので、この時点で一定の有用性があるワークフローだと評価できる。

 

事例で検討してみる

これ以降の理論を進行させるために、ここでいったん制作予定のゲームについて事例で検討してみる。

 

感覚的な気持ちよさ、(これ以降は病みつきUXと表現します。)に関しては、新しい企画では

散らかっているものをぶっ壊しながら粉々に粉砕していくのは気持ちいい

という風に定義した。

 

ここに、何らかのゲームメカニクスを組み合わせる。

 

今回は「目標達成欲」を選択する。

 

そうすると、イメージだが

スクラップ置き場で好き放題にものをぶっ壊して解体していき、まっさらな土地になるまで綺麗にお片付けするゲーム

面積と物の量が、ステージによって徐々に増えていき、更地にするたびに「目標達成欲」を満たすことができる

というゲームデザインが可能になる。

 

モノエタスメント要素

これは、どのようにユーザーを1回限りの体験でも即座に引き込み、ゲーム体験を最大化するか?という視点。

 

  1. 病みつきUXの発見と定義⇒コアUXの定義
  2. ゲームメカニクスの選択⇒ゲームデザイン完了

 

の次のワークフローとして、この「モノエタスメント要素の追加」を検討する。

 

モノエタスメント要素の内容として、下記を検討していく。

 

⑴即時インタラクション

プレイヤーに最初から何かを操作させ、反応させることで、プレイヤーの関与を高める。例えば、ゲームのキーコンセプトをプレイ開始した瞬間に体験できるなど。

⑵引き込むビジュアルとサウンド効果

ゲームの最初の画面やシーンは、美麗なグラフィックスや目を引くデザイン、美しいサウンドや分かりやすいSEにする。ビジュアルやサウンドは最初にプレイヤーの五感を刺激するため、興味を引き体験を最大化することに繋がる。

⑶シンプルな目標

初期段階ではプレイヤーに簡単な目標を提示し、達成感をもたらす。プレイヤーがさらなる目標を達成するためにプレイを続けたくなるよう設計する。

⑷即時の報酬

プレイヤーが最初の数分で報酬を受け取り、成功体験を味わえるようにする。報酬はプレイヤーを刺激し、ゲームの楽しみを高める。

 

上記の4要素を意識して、初期ゲーム体験を設計完了し、ラフに起こしする。

 

基本的には、このゲーム体験の繰り返しが、本タイトルの中心になるイメージ。

そのため、この段階での作業工程について「ゲーム体験の決定」と定義する。

 

  1. 病みつきUXの発見と定義⇒コア体験の定義
  2. ゲームメカニクスの選択⇒ゲームデザイン完了
  3. モノエタスメント要素の追加⇒ゲーム体験の決定

 

という風に、ワークフローを3つまで手順化できた。

 

事例として、文字でラフおこししてみる

では、事例として

スクラップ置き場で好き放題にものをぶっ壊して解体していき、まっさらな土地になるまで綺麗にお片付けするゲーム

面積と物の量が、ステージによって徐々に増えていき、更地にするたびに「目標達成欲」を満たすことができる

という段階まで進めた新作ゲームの企画を、手順⑶まで進行してみる。

 

手順⑴ 病みつきUX

スクラップ置き場で好き放題にものをぶっ壊して解体していき、まっさらな土地になるまで綺麗にお片付けするゲーム

手順⑵ 基礎ゲームメカニクス

面積と物の量が、ステージによって徐々に増えていき、更地にするたびに「目標達成欲」を満たすことができる

手順⑶ー1 即時インタラクション

プレイヤーはスポーンした瞬間から、目の前に3つのガラクタが置いてある廃材置き場に位置し、手にツルハシだけを持っている。できることはツルハシでガラクタを壊すことだけになっており、即時にインタラクションできる

手順⑶ー2 引き込むビジュアルとサウンド効果

廃材置き場は「いかにも汚くてガラクタだらけ」という雰囲気のビジュアルに作りこみ、ガラクタをツルハシで殴ると「ガシャン!」という破壊感のあるSEを流す。さらに、ガラクタ1つが粉々に粉砕して消滅した際には「ピカーン」という綺麗にした感覚を味わえるSEを流し、全てのガラクタを粉砕した瞬間には、地面が美しくピカピカに変わって、背景オブジェクトまで美しく変化した感じで「綺麗にした感」を強調する。

手順⑶ー3 シンプルな目標

最初は3つしか配置されていないガラクタを壊すだけのシンプルな目標にして、目標達成しやすくする。

手順⑶ー4 即時の報酬

プレイヤーは最初のステージで3つのガラクタを破壊し終わると、ステージクリア報酬として、特別な通貨を獲得できる。その通貨で、ステージごとに設置されている自販機でツルハシ以外の破壊用の道具を購入できるようになる。これが報酬として機能する。

 

非常に具体的で効果的なフローだと実感できる。

 

リテンション要素の追及

さて、ここまでのワークフローだと、リテンションの要素が薄いように感じる。

 

なので、この次の手順として、リテンション要素を追加することを検討する。

 

具体的には、リテンション要素の追加方法として、手順⑵で選択した「基礎ゲームメカニクス」に加えて、さらなるゲームメカニクスを搭載することを検討したい。

 

例えばだが、新作ゲームの企画に

「リスクと挑戦欲」

「協力とチームワーク欲」

を追加してみる。

 

この場合は、ステージを追加して「明らかに物が多すぎるステージ」や「破壊しつくして更地にする難易度が高そうなステージ」を作成する。

 

例えば、「小さいものが大量に置いてあって、一人で壊したら制限時間をオーバーしてしまいそうなステージ」や「高い場所に物がたくさん配置してあり、登ったり、飛び道具を使用する必要がありそうなステージ」など。

 

ユーザーは、この場合に

1人で挑戦するなら比較的簡単なステージで頑張って通貨を貯めて、より強力な道具や、よりステージにフィットした道具を得ることで成功率を高める

もしくは、誰かと一緒にログインして、同じステージに協力プレイで挑むことで、成功率を高める

などの選択肢を採用できる。

 

こういった設計によって、ユーザーに「高い難易度のものに挑戦したい=リスクと挑戦欲」を味わわせたり、「仲間と協力して達成したい=協力とチームワーク欲」を味わわせたりすることができる。

 

この設計は、ゲームの複雑性を一定量高めるため、ユーザーをリテンションする結果に繋がる。

 

このように、リテンションを高めるために手順⑷として「追加ゲームメカニクスを選択する」という工程を追加する。

 

ここまでで、ゲーム制作のワークフローを

手順⑴ 病みつきUXの発見と定義
手順⑵ ゲームメカニクスの選択
手順⑶ モノエタスメント要素の追加
ー1 即時インタラクション
ー2 引き込むビジュアルとサウンド効果
ー3 シンプルな目標
ー4 即時の報酬

手順⑷ 追加ゲームメカニクスの選択

という風に設計した。

 

その後の手順については、AIに下記のように整理してもらいました。

手順⑸プロトタイプの作成: この手順では、ベータ版やプロトタイプを制作し、ゲームデザインのテストとフィードバックを行います。プレイヤーが実際にゲームを試すことで、問題点を特定し、改善点を見つけることができます。

手順⑹ユーザーテスト: プロトタイプを使用して、実際のプレイヤーにゲームをプレイさせ、ユーザーフィードバックを収集します。これにより、ゲームの問題点を特定し、調整を行うための貴重な情報が得られます。

手順⑺ ゲームのバランス調整: プレイヤーフィードバックに基づいて、ゲームのバランスや難易度を調整します。ゲームの進行やルールの調整が含まれます。

手順⑻ ローンチとマーケティング: ゲームを正式にリリースし、マーケティング戦略を実行します。これには、プレイヤーの獲得と保持の戦略、プロモーションキャンペーン、ソーシャルメディアプレゼンスの構築などが含まれます。

最終整理

 

  • 手順⑴ 病みつきUXの発見と定義
  • 手順⑵ ゲームメカニクスの選択
  • 手順⑶ モノエタスメント要素の追加
    ー1 即時インタラクション
    ー2 引き込むビジュアルとサウンド効果
    ー3 シンプルな目標
    ー4 即時の報酬
  • 手順⑷ 追加ゲームメカニクスの選択
  • 手順⑸ 企画書と仕様書の作成
  • 手順⑹ プロトタイプの作成
  • 手順⑺ ユーザーテスト
  • 手順⑻ ゲームのバランス調整
  • 手順⑼ ローンチとマーケティング

 

上記の9ステップに、制作ワークフローを整理できました。

 

お疲れ様でした!